普段何気なく充電しているノートパソコンやスマートフォン。実はちょっとした知識や工夫で、充電時間を短縮したり、寿命を延ばしたりできることをご存じだろうか。新しい充電規格も登場、これまでの常識が通用しなくなってきている。最新事情を踏まえつつ、2回に分けてバッテリーと充電の疑問にお答えする。
Q.最近バッテリーの持ちが悪くなった
IT機器に搭載するバッテリーは充電すれば繰り返し使えるが、消耗品の側面もある。古くなると、満充電しても新品のころのように長く使えなくなるのは誰しも実感することだろう。ノートパソコンやスマホに採用されているバッテリーはリチウムイオン電池だが、徐々に容量は減っていく。
一般に500回ぐらい充放電すれば容量が半分程度になると考えておこう。NTTドコモと九州大学が共同研究した「移動端末用リチウムイオン電池の容量劣化特性」によれば、充放電を繰り返すと緩やかに容量が減少し、約600回を超えたあたりで急激に劣化が進むことが見て取れる。
リチウムイオン電池は、電池内部でイオンが移動することで充電と放電を行う仕組みだが、これを繰り返すうちに移動できるイオンの量が減ってしまうのが劣化の原因。ちなみにノートパソコンやスマホでは、現在のバッテリーの劣化度合いを確認できるようになっている。
ウィンドウズ10では、「Windows」キーを押しながら「R」キーを押すと「ファイル名を指定して実行」画面が現れるので、半角アルファベットで「cmd 」と入力し、「Enter 」キーを押す(1)。コマンドプロンプトの画面が現れたら、「powercfg /batteryreport 」と入力して「Enter 」キーを押す(2)。「…保存されました」と表示されたらOKだ
Q.「継ぎ足し」充電が悪いって本当?
現在主流のリチウムイオン電池は、完全に使い切っていない状態で充電する、いわゆる「継ぎ足し」をしても問題はない。継ぎ足し充電が良くないというのは、リチウムイオンより前に普及していたニッケルカドミウム(ニカド)電池やニッケル水素電池の知識だ。継ぎ足し充電を繰り返すと、電池に残量があっても電圧だけ低くなり、電子機器が「残量がない」と誤判断してしまう現象で、「メモリー効果」と呼ばれる。リチウムイオンではこの効果は起こりにくい。
そもそもバッテリーは、使い切ってから充電するというケースは少ないので継ぎ足し充電が当然だ。そのため電池性能を測る際は、単純な充電回数ではなく、一般に100%分の充電と放電を1サイクルとして計算しているので安心してほしい。
ただ、充電の頻度が多いほどバッテリーの劣化を早めるという研究結果もある。容量があまり減っていないのに頻繁に充電するのは避けたほうがよい。
Q.バッテリーの寿命を延ばすことはできない?
前ページで解説したように、リチウムイオン電池は、充放電を繰り返すたびに、化学変化によって劣化する。これを「サイクル劣化」と呼ぶ。使わなくてもある程度は劣化し、これを「保存劣化」と呼ぶ。
保存劣化はバッテリーの充電量が100%や逆に0%の状態では進みが速い。さらに高温も大敵だ。モバイルバッテリーなどを手掛けるアンカー・ジャパンでは、約27度を超えると劣化が始まると警告する。
以上を踏まえて、下図のような対策で寿命を延ばせる。ノートパソコンやスマホの一部では「いたわり充電」などと呼ばれる、満充電の手前で止めたり、満充電の状態が短くなる機能が盛り込まれている。
とはいえ、バッテリーをいたわりすぎて使いにくくなっては本末転倒。必要な場合は100%充電をためらわず、0%まで使い切ってよい。これがバッテリー本来の用途だ。
高温対策も重要。温度が上がりがちな自動車の車内に放置しないのは当然だが、暖房器具の前を避けるなど置き場所にも気を配りたい。ノートパソコンの場合は通気口を塞がないのが鉄則。さらに、ソファや布団の上は熱がこもりやすいので要注意だ。キーボード面からも放熱するので書類などを置いて妨げないようにしたい。
スマホの場合、フルセグの視聴や3Dのゲームなど負荷が高い作業では、発熱が目立つ機種もある。同時に充電するとスマホがさらに熱くなってしまうので、温度が気になったら負荷の高い作業か、充電のどちらか一方を止めるのがお勧めだ。
Q.バッテリー駆動時間が当てにならない
バッテリーで動作するのはノートパソコンやスマホに限らず、ゲーム機やブルートゥースイヤホンなど幅広い。大半の製品はバッテリー駆動時間が公表されているが、一部を除いてメーカー独自の基準で測定している。基本的に駆動時間に有利な条件で測定しているため、実用上は公称値に満たない場合が多い。異なるメーカー同士の製品も比較しにくくなっている。
業界の測定基準があるのはノートパソコンやデジカメくらいだ。スマホの動作時間も実際との乖離(かいり)が大きい。NTTドコモが是正に動いており、2013年にはユーザーの平均的な利用動向に近づけた「実使用時間」を採用。16年夏以降には、KDDIと共同で設定した基準で測定している。