「iPhone SE(第4世代)」はiPhone 14ベースに? USB Type-C対応で2025年以降発売か

もともとは、2024年にリリースとのうわさがあった「iPhone SE(第4世代)」。2022年末には開発が中止されたと報じられたものの、2023年2月には開発が再開されたと伝えられるなど、出るのか出ないのか、はっきりしない状態が続いています。

 そんな中、米テックメディアのMacRumorsが、iPhone SE(第4世代)の新しい仕様を入手したと報じました。それによると、iPhone SE(第4世代)の本体サイズはiPhone 14(71.5×146.7×7.8mm)と完全に一致しており、iPhone 14のシャシーを修正したバージョンが使われる可能性が高いとのこと。iPhone SE(第4世代)は、以前からディスプレイサイズが6.1型になるとうわさされていましたが、それもiPhone 14(6.1型)がベースになることを裏付けているようです。また、iPhone 14がベースになるということで、iPhone SE(第4世代)ではTouch IDが廃止され、生体認証はFace IDのみとなります。

 ただ、当然ながらiPhone 14と全く同一ということでもありません。例えば、重さはiPhone 14よりも6g軽量になるとされています。これは、iPhone 14のデュアルカメラと違い、iPhone SE(第4世代)がシングルカメラになるためと考えられます。このシングルカメラは「Portland」というコードネームで開発された48MPカメラとのことで、画素数だけでいえば、iPhone 15に並ぶことになります。MacRumorsによると、Appleの社内文書では、このシングルカメラ化がiPhone 14からの重要な変更点だと強調されているとのことです。

 この他、iPhone 14との違いとしては、iPhone 15シリーズと同じくUSB Type-Cポートを搭載。ミュートスイッチの代わりに、iPhone 15 Proに採用されたアクションボタンが搭載されます。

 Appleは2024年リリース予定のiPhone 16シリーズで、このアクションボタンを全モデルに標準搭載すると予想されています。ただ、iPhone SE(第4世代)に関しては、現在の開発状況を見ると2025年のリリースになるだろうとのことです。

ただ、このリリース時期が2026年にずれ込む可能性があるとの指摘も出ています。

 iPhone SE(第4世代)には、Apple独自の5Gモデムが搭載されるとの話が以前から出ています。Qualcomm製ほどの性能が出せるか未知数のため、まずは廉価版のiPhone SE(第4世代)に搭載し、その結果次第で2024年発売予定のiPhone 16に採用するかを検討するといわれていました。

 この開発が難航しているという話はたびたび伝えられており、iPhone 16シリーズのテストケースになるはずのiPhone SE(第4世代)が2024年にずれ込んでいることからも、開発計画が大きく遅延していることが分かります。

 Appleの内情に詳しいBloombergのMark Gurman氏によると、当初2024年までにリリース予定だったApple製モデムチップのリリースを2025年春に延期。それを達成することも難しく、現在は2025年末~2026年初頭に延期されているとのことです。iPhone SE(第4世代)に搭載するという計画に変更はないようなので、このままだとiPhone SE(第4世代)も2026年まで発売できないことになります。

 本当にiPhone SE(第4世代)の発売が2026年にずれ込むのであれば、2022年3月に発売した現行のiPhone SE(第3世代)を2026年まで継続販売する可能性があります。さすがに4年は長いので、iPhone 16シリーズ発表に合わせて、iPhone SE(第3世代)の販売を終了するのではないかと思います。その場合、iPhone 14を大きく値下げして穴埋めを図るかもしれません。

iPhone 14の衛星通信機能搭載 緊急SOS送信が可能に

衛星経由で緊急通報が可能になったiPhone 14のモデル。その仕組みと、他社のスマートフォンの対応について解説します。

スマートフォンは、画面の大きさ、メモリの容量、バッテリーの長さ、機能の追加など、年々、アップデートは想定内にとどまり、新製品の発表に対する期待と興奮が薄れつつありました。そんな中、2022年、Apple、Huawei、Motorolaの各社が予想外の新機能を発表しました。それは、Wi-Fiがなかったり、電波の届かない場所にいても­­、通信衛星を使ってテキストメッセージを送受信できるというもので­す。エベレストの山頂や太平洋の離島でもInstagramの投稿ができる、というわけではありませんが、救助の依頼や位置情報の伝達が可能になります。

この機能の仕組み
衛星電話が登場して30年近く経ちますが、依然として高額で、利便性が悪く、誰でも手軽に利用できるものではありません。近年の技術革新によって、一般電話でも衛星接続が利用できるようになりましたが、実用化には新しい衛星が必要でした。これまでの衛星電話では、ごく少数の高軌道衛星が使用されてきましたが、この5~7年で、この業界を牽引するIridiumとGlobalstarが500~800 kmの高度で周回する低軌道(LEO)衛星を多数打ち上げてきました。中でも最も注目を集めたのがイーロン・マスク氏のStarlinkであることは間違いないでしょう。しかし、Starlinkは他の衛星と似たような技術を使いながらも、その目的は比較的高速なインターネット接続を実現することにあり、利用者は衛星専用端末を購入する必要があります。2022年12月、第2世代のStarlink衛星が、さらに2月28日(日本時間)には通信容量を増強するV2 Mini衛星が打ち上げられました。これにより、衛星専用でない通常のスマートフォンでも接続が可能になります。

衛星と携帯電話との通信には比較的低周波のLバンド(1.5~2 GHz)が使用されます。高度約20,000 kmの軌道を周回するGPSおよびGLONASSの衛星も同じ周波数帯を使用します。この周波数帯のメリットとしては、長距離での信号の減衰が小さく、天候の影響を受けにくいことが挙げられます。そのため、携帯電話からの微弱な信号を衛星で受信することができます。デメリットとしては主に、データ転送速度が遅いことです。そのため、今日お話しする全ての衛星利用型サービスでは基本的に、テキストメッセージ(SMS)が使用されます。テキストメッセージは140文字まで、現段階では、自撮り写真をさっと送ることはできません。

衛星通信を実現するには、携帯電話側に衛星ネットワークの無線通信プロトコルに対応したモデム、改良版のアンテナ、専用ソフトウェアの3つが必要です。最も難しいのは1つ目で、まずそのようなモデムを製造する必要があるだけでなく、衛星事業者との調整も必要となります。ここでQualcomm(クアルコム)が業界をリードする存在となっているのも当然と言えます。モバイルチップ市場で優位を築いているだけでなく、衛星システムでも30年近くの経験があるのです(1994年にGlobalstarネットワークを共同設立しています)。このようなQualcommのノウハウとAppleの資金力があって、初めての大規模な衛星通信が実現しました。Appleは、新しいiPhone用のチップに機能を組み込むために資金を投じただけでなく、衛星と地上局からなるGlobalstarネットワークの開発に4億5千万米ドルもの投資を行っています。

市場参入の先陣を切ったのはAppleですが、一人勝ちは長くは続かないでしょう。Qualcommは並行して、この機能をSnapdragon X70モデムチップに組み込んでおり、このチップが主力製品であるSnapdragon 8 Gen 2モバイルプラットフォームに搭載されます。Snapdragon SatelliteサービスはIridiumネットワークとの提携を発表しており、2023年下半期には、衛星経由でテキストメッセージの送受信ができるスマートフォンの登場が期待されています。

他社も先を争うように参入を進めています。Huaweiは、中国の北斗衛星導航系統を利用して自社製スマートフォンで同様のサービスを提供する計画です。Motorolaは、衛星サービスプロバイダーのSkylo(Inmarsat)との提携を進めています。前述のStarlinkは、米国の通信事業者T-Mobileとの間で、T-Mobileが免許を取得している1.9 GHz帯、つまり全米でサービスを共同展開する契約を結びました。

近い将来私たちが使う5Gデバイスは、衛星通信する機能がトレンドになります。しかし、こうした機能が搭載された実際のデバイスが登場するのは早くても2024年頃となるでしょう。

品質とサービスエリア
テクノロジー自体に制約があるため、どのメーカーが作るスマートフォンにも同じ制約がのしかかります。

第一に、衛星通信は、セルラー通信と比較して通信速度も信頼性も低くなります。そのため、携帯電話で衛星が使用されるのは、他の接続方法がない場合に限られ、ネットワークに過大な負荷がかからないよう大きな制限が課せられます。たとえば、緊急時の140文字までのテキストメッセージを許可する、マルチメディアは含めない、などです。Appleではこの点が明確に打ち出されています。まずスマートフォンで正確な位置情報が特定され、状況についていくつかの質問がなされ、情報を収集すると、まとめて1つのパケットで送信されます。

第二に、衛星通信は開けた場所でしか利用できません。深い森の中や密集した市街地、岩場の渓谷などでは通信不可です。

第三に、メールもこれまでのように素早く簡単に送信できるわけではありません。スマートフォンを体の前で持ち、正しい方向に向けて、画面の指示に従い、数百バイトの送受信が完了するまで10から60秒待つ必要があります。

第四に、衛星サービスのプロバイダーによっては、サービスを利用できない地域が存在する場合があります。これは、現時点で最大の短所と言えるでしょう。衛星通信やローミングの先進市場がないためです。そのため、GlobalstarとAppleが緊急SOSを提供するのは、米国、カナダ南部、および西ヨーロッパの一部の国となっています。衛星は、一般に高緯度(緯度62度以上)では利用できず、アラスカやカナダ北部などは圏外となります。この点では、Iridiumが有利で、同社の衛星は赤道および両極地で利用可能です。唯一問題なのは、Qualcommのパートナー企業から互換性のあるAndroid端末が出ていないことです。衛星の配置によっては、カバーされる範囲に隙間ができていて、場所によってはいつでもサービスが利用できるとは限りません。肝心なときに「30分後に再度お試しください」というメッセージが表示される可能性があります。

セキュリティ
テキストメッセージは、安全性の低い通信手段であることはよく知られています。では、衛星経由のテキストはどうなるのでしょうか。Appleによりますと、メッセージはパッケージ化され、さらに暗号化されるため、スマートフォンから衛星に送信されるメッセージの偽造や傍受は不可能に近いとしています。しかし、Appleの場合は、緊急時のメッセージであるため、その情報は速やかに利用者の最寄りの対応センターに転送されます(救助隊や消防隊など)。その際、メッセージは暗号化されず、転送先のセンターの手順に従って処理が行われます。Garmin inReachのインフラストラクチャが利用される、Snapdragon Satelliteサービスも同様です。データ転送自体は暗号化されますが、オペレーターは復号された状態のテキストを扱います。救急サービスではなく、友人にテキストメッセージを送信する場合は、エンドツーエンドの暗号化は期待できません。いずれの仕様でも明記されているのは転送中の暗号化のみです。朗報としては、転送中の暗号化により、送信者アドレスの置換やメッセージ本文の差し替えはできないということです。